脳の発達段階を知ることで、今の自分が見えてくる
先日、何か面白い本がないかなあ~と思い、書店の本棚を見回していたら、こんな本に出会いました。
成熟脳という言葉もさることながら、「脳の本番は56歳から始まる」という副題にピピッと来てしまいました。
というのも私の年齢が56歳だからです。
「思えば遠くに来たもんだ(海援隊)」という14歳の自分を振り返る歌もありますが、56歳になって思うのは、これまでよりも、これからの生きざまをどのようにするか?という問題が重要になってきているということです。
どのような歳であっても、今の自分が果たして正しい道を生きてきたのかということと、これからの自分がどのように生きたら正しく生きれるのだろうという2つの不安感の中で毎日を生きているのではないでしょうか。
この本を書いた黒川伊保子さんは、その昔、富士通のAI(人工知能)の研究者で、脳を研究する中で言葉のもつ語感がどのように生み出されているのかを研究された方です。
現在、黒川さんの脳研究から生み出された本は、沢山あって、「恋愛脳」「夫婦脳」「家族脳」などの本も出版されているので、興味のある人は、手に取っていただければと思います。
黒川さんは、この本「成熟脳」の中で、私達の脳の進化について、明確な答えを与えてくれています。
その一部を簡単に要約すると、
2歳までの幼児は、ことばのブロック単位での認識が全くなく、音を真似るということだけです。
3歳からやっとヒトとなって、脳は言葉のブロックを認識するようになります。
3歳から12歳までは、言葉を感性(五感)といっしょに記憶します。この記憶方式はとても素晴らしいのですが、欠点として記憶容量が大きくなりすぎます。
そこで、12歳~14歳の時期に、記憶する方式を脳は変化させて、共通項や類似性などを利用して、コンパクトに記憶する方式(差分記憶方式)になります。
そして14歳で、脳は大人の脳となり、その人の感性の基盤が作られます。一般に13歳~15歳を思春期と呼びますが、この時期は子供脳から大人脳への変遷の時期であり、脳にとってはとても不安定な時期となります。
その後、15歳~28歳までの時期は、単純記憶が最もできる時期です。つまり、がむしゃらに脳にインプットでき、あらゆるものを吸収できる時期です。
28歳までは、記憶を長期に保存することができる時期なのですが、この段階の脳には欠点があります。それは、アウトプットが得意ではないということです。
つまり、自分の考えをまとめて相手に伝えたり、沢山の知識から正しいものを導き出すということは、この段階ではまだ未熟なのです。
28歳~56歳までの時期は、これらのアウトプット能力を脳が訓練する時期なのです。このアウトプット能力の本質は、記憶の取捨選択ということが必要になってくる時期でもあります。
このため、重要でない情報や、日々必要でない情報については「忘れる」ということで、脳は情報の整理を行っていくことになります。
つまり、56歳を迎えた脳では、インプットとアウトプットのバランスがとてもよくなり、この段階で脳の本番が始まるというわけなのです。
そして、さらに56歳から84歳までは、このようなピークが持続して、脳が最も使える時期になるということです。
いかがでしょうか?
そろそろ、記憶力が悪くなってきたという人もいると思いますが、安心してください。
それは、「忘れている」のではなく、あえて「整理している」のです。
このように考えると、20代~30代で、人前で話すことが苦手という意味も理解できるのではないでしょうか?
アウトプットの訓練は、覚えるというインプットではなくて、むしろ「優先順位をつける」「無駄なものを省く」「正しい結論を導く」というような脳の働きを高めることでもあります。
人は14歳で夢を見て、28歳までがむしゃらに生きて、28歳までに得た知識や経験をもとに、29歳からはまわりを見ながら、適材適所の発想をしてゆくという流れになっているのかもしれません。
このような全体的な脳の進化とは別に、「男性脳」「女性脳」という大きな区別があります。
この本の中で特に面白かったのは、女性の脳が「共感型」であるのに対して、男性の脳が「解決型」であるという点です。1つの問題があっても、女性の脳の捉え方と、男性の脳の捉え方が全く異なるということです。
この点についても、書きたいのはやまやまですが、長くなりそうなので、興味のある方は本を購入して読んでいただければと思います。
ヒューマン話し方教室 スタッフより