NHKスペシャル「見えず聞こえずとも」に感動

先日、夜遅くにNHKスペシャルの再放送をたまたま見る機会がありました。

その番組は、2015年5月3日に放送されたNHKスペシャルで、「見えず聞こえずとも~夫婦ふたりの里山暮らし~」という題名の番組でした。

京都府の北にある丹後半島の山あいに住んでいる梅木さんという夫婦の物語です。

NHKスペシャル

旦那さんの梅木好彦さんは、もともと武者小路実篤が提唱した自給自足の有機農法を宮崎県で学び、その後丹後半島の山の中で完全な自給自足の農業をしていたらしいのです。

一方奥さんの久代さんは、子供のころから耳と目が不自由だったそうで、長年裁縫の仕事をしていたのですが、51歳のときに完全に聴力と視力を失ったそうです。

旦那さんは、50歳ごろまでずっと独身だったのですが、50歳になって農業だけでなく人助けがしたいと思い、障害を持つ人のボランティアを始めたらしいのです。

そこで、知り合ったのが奥さんの久代さんでした。目と耳が不自由な久代さんと話すために、好彦さんは手話を学びました。目の見えない久代さんは、好彦さんの手話の手を触ることで会話を行うようになりました。

そして、お互い50歳を超えたころに結婚したそうです。

好彦さんは、ずっと山の中に住んでいましたので、人と会話することが全くなかったのですが、目と耳が不自由な久代さんは、とても明るい性格だったので、お互いによく会話するようになったそうです。

会話といっても口ではなく、お互いの手に触れながら行うのですが、手話だけではなく、手のひらに文字を書いたりといろんな手法で会話しているようでした。

久代さんは、目も見えず耳も聞こえないのですが、家の中の家事はすべてできます。台所での料理から家の掃除まですべて行っているのです。調味料や冷蔵庫の食材なども、手で触りながら確認して、料理を行うのです。

この様子をカメラで撮影しているのですが、旦那さんのお弁当や朝食を用意している姿を見て、人間の持つ生きる力に本当に驚きました。

それと、何と言ってもすばらしいのは旦那さんの奥さんへのやさしさです。奥さんの目となり耳となって、いっしょに買い物をする姿にも感動しました。

旦那さんは、毎日山の中にある小さな田畑まで車で行くのですが、その山の中には昔自給自足するために住んでいた家があります。その家の中で毎日一人でお弁当を食べているのです。

ここで、さらに驚くべきことがありました。自宅にいる久代さんは、パソコンで旦那さんの好彦さんにメールを打っているのです。目が見えない人用にキーボードで入力した文字を確認する装置があるようなのですが、とても慣れた手つきでパソコンを打っているのです。

一方、山の中の家では、好彦さんがパソコンで、久代さんからのメールを受け取っていました。耳が不自由な久代さんは電話ができませんから、パソコンが唯一の通信手段になっているだなあと思いました。

スマホでは、目の見えない人は文字が打てませんし、ボタンもどこにあるかがわかりませんが、パソコンのキーボードであれば、目の見えない人でも使えるんだということをあらためて理解しました。

旦那さんの好彦さんが68歳、妻の久代さんが65歳という年齢ですが、お互いに助け合いながら生きている姿に深い感動を覚えました。

世の中には、障害を持った人や病気をかかえた人がたくさんいますが、まわりの人と関りながら前向きな気持ちで生きていくことが一番大切なことだと思いました。

また、どんな状況であっても人は助け合うことで強く生きていけるんだなあと思いました。

皆さんも再放送があったら見ていただきたいと思います。

NHKスペシャルのページはこちらからどうぞ

ヒューマン話し方教室 スタッフより

ピース又吉「火花」の世界観

火花 又吉

最近、お笑い芸人のピースの一人、又吉直樹さんが書いた「火花」を読みました。

テレビなどでも紹介されて、純文学をお笑い芸人が書いたということで話題になっている本です。

又吉さんといえば、「太宰治」好きで、これまで沢山の本をこれまで読んでいて、NHKなどでも本に関わる番組なども見たことがありました。

どうして、こんな根暗ぽく見える人がお笑いなんかをやっているのだろうと傍からは見られがちな人だと思います。

そういう人が書いた本ということで、興味があって読むことにしました。

本を読んだ感想から言うと、「いったいこれは何を伝えたいと思ったのだろうか?」という疑問詞で終わってしまうような本でした。

もしかしたら、お笑い芸人のアイデンティティを伝えようとした本なのかもしれないとも思いました。

主人公は、どちらというと又吉さんに似たタイプかもしれませんが、もう一人の先輩芸人が実在する人なのか、それとも仮想の人なのかはわかりませんが、とても強烈な個性を持っているお笑い芸人です。

この先輩芸人と主人公の芸人の間の言葉の掛け合いがとてもシュールでなんとも理解しがたい部分があって、そこがお笑いの本質と生きる意味みたいなものを感じさせてくれました。

おそらく、この本を読んでわかったのは、明るい人だからお笑いに向いているとか、暗い人だからお笑いに向いていないというような表面的なことではなくて、純粋に面白いことを年齢に関係なく続けている「あほ」な生き方がお笑いの本質なのかもしれないと思いました。

ほとんどの人は、社会の規範とか、常識とか、他人の目とかを気にしながらその人の人生があると思いますが、本質的に面白いという純粋な目を持ち続けて生きることの大切さを主人公の目から伝えているように思いました。

人それぞれのアイデンティティーとその人の持って生まれた何かを見つめることが、大切なことを気づかせてくれるのかもしれません。

興味のある人は書店で手にとってみてください。

ヒューマン話し方教室 スタッフより