皆さんは、「風と共に去りぬ」という映画を見たことがありますか?
私は小学校の時にこの映画を見て、スカーレット・オハラが赤土の大地に立ち、夕日を見ているという光景しか記憶に残っていませんでした。
今年の5月に「風と共に去りぬ」の新訳版が新潮文庫から発売され、今まで忘れかけていた記憶を取り戻そうと思い、この本を読むことにしました。
以前ブログでも書いた「ハリエット・B・ストーという女性を知っていますか?」の中で書いたように、1860年代のアメリカは南北戦争の時代にありました。
ストー夫人はアメリカの北部の人として、黒人の解放運動を行った人ですが、一方、「風と共に去りぬ」の主人公の「スカーレット・オハラ」は南部のジョージア州で生まれ、同じように南北戦争を経験した女性です。
この本を書いたマーガレット・ミッチェルは、第2次世界大戦がはじまる直前の1936年(昭和11年)にこの本を発表しました。この本はあっという間に全世界で翻訳され、大変な人気になりました。そして3年後の1939年(昭和14年)に映画化され、あの有名な「風と共に去りぬ」という映画ができたのです。
日本との戦争が始まる1941年の2年前に生まれた映画ですが、その後の戦争をはさんで、映画は全世界に広まり、その興行収入はいまだに世界一をキープしているそうです。
マーガレット・ミッチェルは、ジョージア州のアトランタで生まれており、まさにそのアトランタが「風と共に去りぬ」の舞台なのです。映画では、焼け落ちるビルの中をスカーレット・オハラとレット・バトラーが馬車で通り抜けるシーンが鬼気迫る映像として描かれています。
この「風と共に去りぬ」の文庫本は全5巻あり、相当の読み応えがあります。その内容は映画とは異なることも多いので、映画を見た方も十分楽しめる本になっていると思います。
主人公のスカーレット・オハラは、綿栽培で成功し大金持ちになったお父さんと、貴族の家柄で敬虔なキリスト教徒であり、人のために尽くすお母さんの間に長女として生まれました。
子供の頃は全く苦労もなく、その美貌から男性にもてまくっていたのですが、南北戦争というアメリカを二分する戦争の中で、恐怖や貧しさと戦いながら、たくましく貪欲に生きていく女性に変わっていきます。
お金と愛と希望を求めて生きるスカーレットの生きざまは、決して清廉な生き方ではありませんが、どんな苦境の中でも負けない強さは、読者に勇気を与えてくれているように思います。
南北戦争というと、リンカーン大統領が黒人の解放を掲げて戦った正義の戦争というイメージが私たちには強いのですが、それはアメリカの一面であり、南部の農業地帯に脈々と流れる開拓精神や人と人のつながりを大切にする文化、そして伝統や宗教的な価値観を持つ人々が、南部の文化を守るために戦った戦争であったことも忘れてはいけないとこの本は伝えているように思いました。
人は生まれながらに自分のアイデンティティを無意識に意識し、その流れに沿って生きているように思います。自分が生きるアイデンティティとはどこにあるのか?自分の元気はどこから来るのか?自分の運命を嘆くのではなく、その根本にある力の源を知れば、明日には必ず希望が待っている。
そういうテーマをこの本は教えてくれるような気がしました。
興味のある方は、是非本を読んでみてください。
————————————
ヒューマン話し方教室には、「アイデンティティトレーニング」というすばらしいトレーニングがあります。自分が悩んでいる問題の根本を見つめることはとても勇気のいることかもしれませんが、人生では必ず1度は通らなければならない関門の1つだと思います。
そういう意味で、若い人にぜひおすすめしたいトレーニングです。
ヒューマン話し方教室 スタッフより