ハリエット・B・ストーという女性を知っていますか?

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皆さんは、ハリエット・B・ストーというアメリカ人の女性を知っているでしょうか?

恐らく、アメリカ人であれば知らない人がいないほどの有名な女性です。

名前は知らなくても、「アンクル・トムの小屋」という本があることはご存じだと思います。

この本の著者が、ハリエット・B・ストー夫人なのです。

先日、古本屋でハリエット・B・ストーの伝記をたまたま目にして、この本をよく見たら、「赤毛のアン」の翻訳を手がけた村岡花子さんが書いた本であることを知りました。

この本は、1955年に書かれたものですが、村岡花子さんがこのストー夫人の女性の生き方に感銘を受け、その伝記を書いたことがうかがえます。

ハリエット・B・ストー夫人は、1811年にアメリカのコネチカット州に生まれます。そのころのアメリカは、アフリカから黒人を物のように売りさばく奴隷制度があたりまえの世の中でした。

アメリカの北部では、黒人の奴隷制度に反対する人も多かったのですが、南部では農業がさかんで、綿花などを栽培して輸出するため、安い労働力して黒人を奴隷として働かせていました。

この奴隷制度に反対する北部と、奴隷制度を存続したい南部が政治的にぶつかり、アメリカを二分する戦争が行われたのが、1861年に始まったアメリカの南北戦争です。

この戦争の10年前の1851年に、ストー夫人は奴隷制度反対の意思を表すため、新聞に「どれいトムの小屋(アンクル・トムズ・ケビン)」という連載を始めました。その後、新聞の連載は本として出版され、アメリカをはじめ、ヨーロッパの国々まで、瞬く間に売れ、1年間で150万部以上も売れたベストセラーとなりました。

この小説は、アメリカの農場で奴隷として働かされている黒人の悲惨な現状を本としたものでしたので、当時の社会に大きな影響を与え、この本がきっかけで、南北戦争へと時代が展開していくことになります。

6人の子供を育てる母でありながら、アメリカ社会に問題提起をし続け、黒人の人権や教育に生涯尽力しつづけたストー夫人は、「黒人の母」として今でも尊敬されている人物です。

1896年に85歳で亡くなるまで、本で得たお金を黒人の教育に使い、自身は質素な暮らしをしていたストー夫人の精神は、現代のアメリカ社会の中でも脈々と生き続けているように思います。

そして、1893年に生まれ、英語を学び、戦前・戦中・戦後を翻訳家として生きた村岡花子さんの生き方にも、大きな影響を与えている作家のひとりだと思います。

私はこの本を読んで、当時の資本主義優先のアメリカで、この本がいかに大きな影響を与えたか、そして本を読んだ人々の考え方が次第に変わってゆき、リンカーン大統領が生まれ、南北戦争が起き、アメリカの良心が黒人奴隷制度を変えてきた歴史について、はじめて知ることができました。

皆さんも、この本を読んでいただければ、何か大切なものを思い出すのではないかと思います。

ヒューマン話し方教室 スタッフより