三国志の物語の中に、劉備玄徳(りゅうびげんとく)が、天下統一のための参謀・相談役として諸葛亮(しょかつりょう、諸葛孔明)を得るために、3度も家まで訪ねてお願いをしたという物語があります。
これを「三顧の礼」といい、身分や年齢に関わらず、誠意を尽くし、礼儀をつくして、交渉に臨むことを言います。
前回の記事でも紹介した、話し方教室の「捨田利先生」も、人との交渉に関してはとても優れた方であり、それに関する本も出版しています。
この「交渉の技術が面白いほど身につく本(捨田利裕著)」という本は、2001年に発売された本ですが、今読んでも色あせることなく、面白く読むことができると思います。
また、この本は韓国語にも訳されており、日本のみならず、多くのビジネスマンに役立ってきた本です。
人や会社との交渉において、相手から信頼されるためには、積極的に行動し、誠意と困難な状況に打ち勝つアイデアが必要です。
よく経営者の方が、テレビの番組などに出て言う言葉に、
「最近の若い技術者は、新しい商品の開発に対して、すぐに出来ないとか、無理だとか言って、どうしたら出来るのかを考えようとしない。」
という経営者の愚痴のような言葉があります。
たとえ、年下の社員であっても、命令だけで動くわけではなく、誠意を尽くした話し方で接していかなければ、人を動かすことはできません。
会社の組織においても、人間関係は複雑な上に、中間管理職になると、年下の社員と上層部の間に挟まれて、どうやって仕事を進めていけばいいのかと悩んでいる人も多いと思います。
また、対外的な契約交渉、クレーム対策などにおいても、人と接する場合はすべて交渉の技術が必要になってきます。
捨田利先生は、前回の記事でも書いたのですが、思ったらすぐに行動される方でした。また、それと同時に、とても不思議な交渉術を持っていました。
捨田利先生は、東京や横浜で話し方教室の会場をレンタルして話し方のレッスンを行っていました。5年ほど前になると思いますが、捨田利先生は、新橋駅前にある会場で話し方教室を開催するようになりました。
その時、私のところに来て、
「話し方教室を月曜日の朝の時間帯にやりたいと思っているんですよ。」というのです。
私は、驚いて
「仕事前の朝の時間帯に、話し方のレッスンを受ける人なんているんですか?」と尋ねると、
先生は、
「実はやりたいという人がいるんですよ。でもね、朝の7時30分くらいから始めないと仕事場に行くのが遅くなると思うんですが、困ったことに、7時30分からレンタルできる会場がないんですよ。」
「話し方教室の場合、発声練習などもあるので、声を出してもいい会場じゃないとだめなんですよ。」
と言っていました。
その話を聞いてからしばらくして、会場が見つかったということで先生が来られました。
その見つかった会場というのは新橋駅前にある喫茶店で、通常は8時00分に開店する喫茶店なのですが、その喫茶店のオーナーと交渉して、7時30分から喫茶店の中にある個室を借りることができるようになったということでした。
一体どういう交渉をしたのかと不思議に思いましたが、さっそく私に、
「新橋の朝のレッスンのポスターをすぐに作って欲しいんです。」という依頼が飛んできました。
こんな調子で、内部の人に対しても、外部の人に対しても、年下の人に対しても、誠意と礼節を持って交渉し、いつの間にか目的を達成していくので、私たちはそのことを「捨田利マジック」と呼ぶようになりました。
そういう捨田利先生の教えが、今でもヒューマン話し方教室を支えていると思います。
ヒューマン話し方教室 スタッフより