「舟を編む」(三浦しをん)を読む

舟を編む 三浦しをん

2012年の本屋大賞第1位となった三浦しをんさんの「舟を編む」の文庫版を読みました。

これまで私が読んできた小説とは一風変わった小説で、これは実話なのかもしれないと思ってしまうような小説でした。

一冊の本を作ることも大変なことですが、「大辞典」という巨大な言葉の編纂事業に携わる人々の大変さがよく伝わってきました。

出版社の社員となったちょっと変わった青年が辞書作成に苦労している姿と、日本語を究極まで突き詰めていく妥協のない姿は、今現在出版社で働いている人々の本当の姿を映し出しているんだろうなと感じました。

何気なく言葉を使っている私たちには、想像もできない世界ですが、日本語の持つ複雑さと、言葉の大切さを感じさせてくれる本だと思います。

この本の中の一節に、長年辞書作成に関わってきたご高齢の松本先生の象徴的な言葉があります。

「言葉は、言葉を生みだす心は、権威や権力とはまったく無縁な、自由なものなのです。また、そうであらねばならない。自由な航海をするすべてのひとのために編まれた舟。「大渡海」がそういう辞書になるよう、ひきつづき気を引き締めてやっていきましょう」

日本では、辞書の編纂ということが国家ではなく、民間で行われているそうです。そういう意味で、言葉が自由であり、歴史の中で使われてきた言葉が長らく残っているのかもしれません。

私も年をとるにつれて、日本語の大切さを感じると共に、自分が正しい日本語を知らないということを恥ずかしく思うようになりました。

昔の人は、漢文やら漢詩やらをすらすらと言える人も多かったようですが、今ではそのようなことを全く知らない世代がほとんどです。

そのような中で、辞書を編む人々が黙々と言葉と格闘して、数十年の月日を経ながら一つの辞書を作っているかと思うと、頭が下がる思いです。

興味のある方は、是非ご一読ください。

ヒューマン話し方教室 スタッフより

なぜ継続できない人が多いのか?

仕事とは別に、空いた時間で自分のスキルを磨きたいという人も多いと思います。

最初は、「さあ頑張るぞ~」と意気揚々と初めてみたものの、2,3回くらいでその気力が減退して、いつの間にか自然消滅してしまう・・・というようなことってありませんか?

決して、あなただけではなくて、ほとんどの人がそのようなことを体験していると思います。

私たちの心というものは、とても流動的で勝手で、節操がなくて怠惰なものだということを知ることが大切です。

そういう信用のならない自分の心をどのようにコントロールして、初心を忘れず継続させることができるのでしょうか?

この場合、コントロールしているのも自分ですから、心の審判がこれくらいだったらいいかと甘いことをささやいて、結局は元の木阿弥ということになってしまいます。

つまり、自分でコントロールするということは、よほど強い意志を持っていないとできないわけです。

逆に言うと、「自分でコントロールできる」なんてことは土台無理なことだということなのです。

そこで、どうするかというと、まわりの人に向かって自分の継続することを「宣言」し、それを記録として残し、証拠として消えない状態にしてしまえばいいのです。

これを「有言実行」といいますが、さらに進めて「公言公開実行」というくらいまで高めておく必要があります。

自分の習慣や考え方を大きく改革していくためには、これくらいの思い切った決断が必要なのです。

この思い切った命がけの決断のことを、「決心」といいます。

人は、「決心」ができれば、必ずそれを守ることが必要になり、まわりから見られているということもあって、継続することが義務化してきます。

最初は義務だと思っているので、とてもつらい時期がありますが、ある時期を過ぎるとそれをすることが「あたりまえ」と捉えるようになってきます。

大人になると、自分で何でも決められるようになりますが、逆に言えば自分を怠惰な方向に向かわせることになります。

そういう怠惰な自分と決別して、新しい自分に変わるための「決心」をすることが、今の私たちに必要なことだと思うのです。

ヒューマン話し方教室 スタッフより

人を褒めることで、お互いが変わっていく

話し方教室のトレーニングの中で最初に行うレッスンが「人を褒める」というレッスンです。

初対面の人をよく観察して、その人のいいところを褒めることで会話を始めるというレッスンです。

話のキッカケとしてもいいですし、話の中で気が付いた点を褒めることでもいいと思います。

相手と気が合って話ができる状況になるためには、自分のことだけを話すのではなく、相手のいいところを掘り下げながら、相手との距離を縮めていくのがいいと思います。

逆に相手を褒めることで、相手もそういう気配りができる人なんだと思って、謙虚に話をするようになることもあると思います。

しかし、話し方のレッスンで出来ても、実際の会話の中では人を褒めるということは咄嗟にできるわけではありません。

ですから、日常生活の中で人と接する時に、相手との会話で「意識的に相手のいいところを褒めるようにしよう」と心がけることも一つのトレーニングだと思ってください。

人によっては、必要最小限の会話だけでいいとか、要件だけ伝われば問題ないと思いがちですが、そういう希薄な会話だけで続けていると、本当の信頼関係が築けないだけでなく、お互いに相手との距離が離れて大切な話ができなくなることもあります。

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先日、インターネットのニュースを見ていたら、日本の会社は仕事中や休憩時間に仕事に関係ない話をしていることが多く、それが仕事の効率を落としている原因ではないかと外国人が指摘したそうです。

確かに、日本の会社では無駄な話が多いことは反省すべきだと思いますが、社員どうしが個人的なことをお互いに理解することで、チームワークが生まれ、困難な仕事も乗り切ることができる面もあるのではないかと思います。

このあたりは外国人と日本人の考え方の違いもあるのでしょうが、日本では「仕事」=「労働」という捉え方ではないような気がします。

数字には表れない人と人の間にある潤滑油のすぐれた性能が、細やかなサービス、品質の優れた製品、自由で新しい発想を生んでいるような気がするのです。

そういうことから、できるだけ労働の効率を落とさないように心がけながら、仕事の中で人との会話を楽しむ余裕は持ち続けたいと思っています。

ヒューマン話し方教室 スタッフより

話していて気づかいのある人とない人

よく人と話していて感じるのは、その人の中に「気づかい」がある人とない人がいるということです。

一言で「気づかい」といっても難しいのですが、相手の立場というものを推し量って話すというような意味でとらえていただければと思います。

この「気づかい」は、「おべっか」や「丁寧さ」とは異なるものです。

相手の意図している部分がどこにあるのかが不明の場合であっても、いろんな可能性を含めて相手の立場を推し量って言葉を発するというようなことです。

この「気づかい」は、普通は年をとるほどに次第に身についてくるものですが、誰もが身に着けることができるわけではなくて、人と人との関わりを大切にしていない人には身に付くことはありません。

一方で、この「気づかい」は仕事の中で身に着けるものでもあります。

たとえば、接客業のようないつもお客様と接している職業の場合には、長年の仕事の中で身についてくるもののように思います。

また、この「気づかい」は言葉というよりも、言葉を発するときの「気持ち」や「表情」といったものによりウェイトが置かれているものかもしれません。

話し方のトレーニングの中で大切なポイントとして「態度と表情」というものがあります。

言葉だけではなくて、話し方には「目で見て伝わる」という部分もあるのです。

1つ例を言いましょう。

あなたは、コンビニやスーパーで買い物をしたとします。

レジでお金を払うときの態度や商品を受け取った時の表情を考えてみてください。

自分のお金で商品を買っているのだから、どんな態度や表情でもいいだろうと考えていませんか?実は、そういう考え方こそが、「気づかい」のない考えなのです。

商品を受け取った時に、店員さんの目を見て「にこっ」としてみましょう。

それだけで、「気づかい」が伝わります。

 

もう1つ例を言いましょう。

友人や家族と約束していた日時に、仕事が突然入ってきたとします。

その時、あなたは仕事を選びますか?それとも友人や家族との約束を選びますか?

日本人の場合は、仕事を選びそうですよね。

もしあなたが仕事を選んだとしたら、友人や家族には何といいますか?

もし、友人や家族との約束を選んだとしたら、会社の人には何といいますか?

このように、2つに1つしか選択肢がないような場合に、いかに「気づかい」ができる言葉を話せるかが大切だと思います。

この場合、一番悪い対応は、一方に対して「うそ」を言うことです。

その場だけやり過ごせばいいという考え方は「気づかい」のない考えです。

きちんと誠意を持って説明すれば、相手だって必ずわかってくれます。

池上彰さんの話し方っていいですよね

砂漠

先日、池上彰さんの「大人も子どももわかるイスラム世界の「大疑問」」という2002年に出版された本を購入し、ここ数日で一気に読み終わりました。

今から13年ほど前に書かれた本でしたが、イスラム教のことや、中東の歴史のことなど、今まで全く知らなかったことを初めて理解できたように思います。

池上彰さんと言えば、ニュースのわかりやすい解説者としてよくテレビ出ていますが、書かれた本を読んでも、テレビと全く同じようにわかりやすく、この人の深い知識と、わかりやすい説明には本当に敬服してしまいます。

加えて、とても謙虚で丁寧な話しぶりと、説得力のある話の組み立てにも、感心してしまいます。

一体どのようにしたら、池上さんのような話し手になれるのだろうかと、その舞台裏を知りたくなります。

池上さんのすばらしいのは、ニュースや事柄に至るまでの歴史や経緯について十分に下調べをして、点と点をつなぎながら、そのニュースに至るまでのストーリーを解明している点にあると思います。

その歴史や事実を事細かに伝えるというより、「なぜ、そうなるのか」という因果関係を聞き手が理解しやすいように、アレンジして伝えているところが、池上流だと思います。

その昔、NHKで週刊子供ニュースを10年近くもやっていたという経験が、池上流のニュース解説を生み出していったのかもしれません。

さらに、池上さんのすごいところは、「自分の意見を絶対にニュース解説に混ぜない」という点だと思います。

多くのテレビのニュースアナウンサーや解説者は、自分の意見を混ぜながらニュースを紹介していることが多いのですが、世の中にはいろんな考え方があって、自分の意見を混ぜてニュースを紹介することは、視聴者に考えさせないということにもなるし、意見の違う人に無理やり自分の考えを押し付けることにもなると思います。

その点で、池上さんの解説の姿勢は、「視聴者に考えさせるヒントを与えている」というところまでで、結論はどうぞ自分で考えてくださいと言っているのです。

これは、私たちの日常の話し方にも参考になることがあると思います。

話の結論を言ってしまうよりも、相手が話の内容を聞いて、「それって、こういう事なの?」と逆に気づいて、聞き返してくるような話し方が、最もその人の記憶に残ってくるのではないかと思うのです。

一方的にしゃべり続ける人より、相手にしゃべるための隙間と材料を与えながら話すという人の方が、圧倒的に好感度があがるように思いませんか?

そういう意味で、池上さんの好感度はピカイチだと思います。

今回、池上さんの書かれた本を読んで、宗教について考えたり、中東の歴史について考えたり、これから先の時代について考えたりすることができて本当によかったと思いました。

皆さんも、書店で池上さんの本を手に取ってみてはいかがでしょうか?

ヒューマン話し方教室 スタッフより